実弾の窃盗疑われた署員の裁判 「取り調べは違法」県に約297万の支払い命じる
2023.08.31 17:33
- 奈良西警察署で保管する拳銃の実弾を盗んだ疑いをかけられ違法な取り調べを受けたとして、男性署員が県に約820万円の損害賠償を求めた裁判で、奈良地裁は約297万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。
- 取調官
- 「とりあえずお前がやったというのは確定してんねんから こっちとしては。どうせアウトやからな。どうせアウトやねんから。」
- 男性巡査長
- 「それを最小限に収めようって話でしょ?」
- 取調官
- 「そうそうそうそう。ほんまアウトやねん。はっきり言うたらな、もうお前やねん。」
- 県警は2022年1月、奈良西警察署で保管する拳銃の実弾5発を紛失したと発表し、窃盗の疑いで、直前に拳銃庫の点検をしていた20代の男性巡査長に取り調べを行いました。しかしその後、実弾は実際には紛失しておらず、男性は無実だったことが分かりました。巡査長の男性は長時間に及ぶ取り調べで自白を強要されうつ病を発症し、休職を余儀なくされたとして、2022年8月、県に対し約820万円の賠償を求め、奈良地裁に提訴しました。この裁判をめぐり県と男性の双方から和解案が出されていましたが折り合いがつかず、31日、判決を迎えました。奈良地裁の寺本佳子裁判長は「男性のみに嫌疑をかけることに合理性はなく、心理的に追い詰めて捜査側の薄弱な証拠を埋め合わせるように執拗に自供を迫っている」と指摘。「限度を超えた違法な取り調べ」として、県に対し慰謝料などあわせて約297万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。原告の代理人は今後の方針を明らかにせず、判決について次のように述べました。
- 原告代理人 松田真紀弁護士
- 「警察の旧態依然とした自白偏重がある取り調べ。そして もうひとつの問題点として、警察官が警察官を取り調べるときの任意性というのを どのように考えるのか。ここのあたりに踏み込んでいただいた判断がある程度あったのかなと評価はしています。」
- 一方で損害賠償額約297万円のうち、70万円とされた慰謝料については…。
- 原告代理人 松田真紀弁護士
- 「残念ながら日本の裁判における慰謝料の算定基準、慰謝料の相場というのは非常に低い。原告の受けた損害をカバーするような慰謝料ではないところは残念なことだと思います。」
- 判決を受けて県警の奥村直樹首席監察官は「判決結果を真摯に受け止め再発防止に努めてまいります」とコメントしています。