保護施設「鹿苑」で「シカを虐待」と獣医師が通報
2023.10.02 19:25
- 奈良公園にあるシカの保護施設「鹿苑」で保護されているシカに、十分なエサが与えられていないなどとして奈良の鹿愛護会の獣医師が県と市に通報書を提出していたことが分かりました。
- 奈良公園の「鹿苑」は県が設置し、奈良の鹿愛護会に運営を委託しています。「鹿苑」(ろくえん)内には農作物などに被害を与えたシカなどを収容する「特別柵」と呼ばれる場所があり、現在、およそ240頭が保護されているといいます。
- 通報書を提出した獣医師によりますと、「特別柵」に収容されたオスのシカに限って死亡時の平均推定年齢が若く、平均体重も軽い傾向があり「エサの量や質が不十分」などとして動物虐待にあたるとしています。
- 通報書を出した 獣医師 丸子理恵さん
- 「今まで閉じられた空間だったので誰も知らなかったということだと思います。今回私がそれを言ったことでちょっとでも皆さんに関心を持っていただいて、ああいうシカがいるから飼育環境を改善しなきゃいけないなというふうに向かってくれたらいいかなと思っています」
- 一方、奈良の鹿愛護会は「特別柵」のシカは国の天然記念物かどうかが分からず、奈良公園から離れた場所に生息するシカの場合、柵内の環境になじめず、死亡するケースがあると反論しています。
- 奈良の鹿愛護会 山﨑伸幸事務局長
- 「虐待ではありません。柵の中で暮らすことに関して野生の動物として耐えられないということで、エサをとらずに死んでしまうシカもありますが、それへの対処はそこまではできない。必ずしも良いエサをあげて太らせれば大丈夫だということはまったく根拠もないですし、(特別柵のシカが)一定数死んでしまうということはあるんですが、それを虐待をしたとかエサ不足であると言われることは一切ないです」
- この問題に行政も動き始めました。2日、県庁で会見した山下知事は、奈良の鹿愛護会に鹿苑の管理運営を委託する条件の中に「社会的非難を受ける行為をしないこと」などがあるとして、9月21日に県独自で獣医師を中心にした調査チームを立ち上げたことを明らかにしました。山下知事は10月中に調査結果をまとめるとしています。また、奈良市は動物愛護法に基づいてあすにも現地調査を行うとしていて、動物虐待にあたると判断した場合には行政指導などの対応をとるとしています。